イエローの彼女の夢を叶える為、日本の取引先オーナーが台湾にやって
きた。
オーナーさんとイエローたちとの会談が明日という段階になって突然イ
エローからの申し出によって、夢を見据えたミーティングが吹き飛んで
しまった。
イエローは理由を話せないという。。。
一体、何があったのだろう?
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婚約を破棄したのはイエローの方だった。
イエローと言うより、イエローのお母さんだった。
2人のコミュニケーションが上手く行ってないような雰囲気は感じていた。
店で2人が一緒になるとイエローのお母さんはややキツい口調で彼女に接
していたし、彼女の顔からは笑顔が消えていたから。
ちょっと相性が悪いのかな?
でも結婚して一緒に住む訳じゃないし。
そう楽観的に思っていたのだが。。。
友人の話では以前からお母さんは2人の交際に反対していた。
その理由は。。。。占い。
生年月日や血液型。
占いでは相性が最悪だったそうだ。
台湾人の間では占いが広く信じられていた。
会社の採用試験の際に社長との相性で採用不採用が決まる事もあると聞い
た事はあった。
それは結婚にも当てはまる。
でも。。。。
イエローと彼女はもう6年も付き合っている。
相性が悪かったらとっくに別れていただろうに。。。
1度は納得、了承していたお母さんが土壇場になってテーブルをひっくり
返してしまったのだった。
どうしてもお母さんの中で納得出来ないものがあったのだろう。
でも。。。でもなぁ。。。
結婚は当人同士の問題なんだと思うんだけど。。。
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イエローとはその後何回か会う機会はあったけど、婚約破棄に関して私から
何かを聞くような事はしなかった。
まだイエローの心に傷として残っていたら、乾ききっていない傷に触れる事
なんて出来なかった。
ある日、イエローから食事に誘われてランチを共にした。
「あの日は本当にすみませんでした。。。」
イエローが口を開いた。
事の経緯を話してくれた。
私が聞いていた通りの展開だった。
「それでどうなの?もう彼女の事は忘れられたの?」
「はい。。。。実は最近まで彼女とは会っていたんです。。。親に内緒で。」
「そうだったの?よりを戻してまた付き合う気があるの?」
「僕はそう思っていたんですけど。。。ダメになりました」とイエロー。
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イエローと彼女は婚約破棄後も時々会って食事をしていた。
楽しかった。
でも、以前とは何かが違っていたそうだ。
イエローが切り出した。
「俺たち、もう1回やり直さないか?もちろん結婚を前提にしてさ」
「でも、御母様が。。。御母様の決めた事を覆すなんて無理でしょう?」
「そんな事ないさ。俺が。。。俺がお袋を説得するからさ。もう1度、君と
やり直したいんだ。俺には君が必要なんだって今更ながら気がついたんだ
よ!」
「嬉しい。。。。けど、もう私たち。。。。終わりにしないと。。。」
「なんで?なんでだよ?俺たち絶対にやり直せるよ!お袋は俺が説得する。
俺の人生には君が必要なんだって。俺の人生は俺のものだって。お袋には
そう言うからさ!」
この言葉を聞いて彼女の心を取り戻せる。
そう思っていたイエローだったが。。。。
「じゃあ、なんであの時、そう言ってくれなかったの。。。なんで御母様の
話を聞いて、黙って頷いてしまったの? 私。。。私、悲しかった。。」
そう言って彼女は席を立ち、レストランから出て行ってしまった。
イエローは追いかけられなかった。。。
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それからというもの、イエローは生きる気力を失った。
店を建て直さなければいけないのに心、ここにあらず。
仲間と会えばそれなりに楽しかったけど、どこか無気力だった。
夜、店を閉めると真っ直ぐ家には戻らず、バイクで街を放ろうする。
行き先もなく、ただバイクに乗って無為に時間を過ごしていた。
そんな日々が続いていたある日のこと。
「あっ!」
イエローは彼女の姿を見かけてしまった。
バイクを止め、彼女が通りを歩いているのを見つめていた。
「挨拶くらいしてみようかな。。。うん、ちょっと声を掛けてみよう」
そう思い、バイクを走らそうとした瞬間だった。
道に止めてあった黒いドイツ車から1人の男が下りて、彼女に向かって
手を振った。
笑顔で手を振り返す彼女の姿。
「もう終わったんだ。彼女はもう新しい人生を歩み始めている。そう思
ったんですよ。ショックだったけど、俺も新しい人生を歩み始めない
とって」
そうイエローは寂しげな笑顔を浮かべていた。
イエローの恋は終わりを告げた。
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その後、イエローの彼女とは1度だけ電話で話をした。
日本からわざわざ足を運んでくれたオーナーさんへ謝っておいて欲しいこと。
私に迷惑を掛けてしまったことを謝ってくれた。
そしてイエローとの別れ。。。本当に辛かったことを話してくれた。
話を聞いている私も辛かった。
新しい彼氏が出来た事も話してくれた。
今はどこで何をしているのかは分からないけど、幸せになっていて欲しい。
イエロー。
彼女と別れて1年後。
通っていた歯医者で歯科技工士として勤務していた女性と付き合う事になり、
その子と1年半の交際を経て結婚。
店の経営が傾き、家庭を守る為に店を閉め、今ではサラリーマンとして日々
頑張っている。
そして2人の子供に恵まれている。
今でも時々連絡をくれるイエロー。
相変わらず良い奴だ。
幸せな家庭を守るお父さんになったイエロー。
頑張れ!
イエロー!