台湾喜人伝 18話 麗しの台湾美女 2

台湾のとある街で見かけた美女。

何度かすれ違う間に軽く頭を下げてくれるようになっていた。

ある日、意を決してその女性に話しかける事に成功。

心に火が灯った私は次なる行動に出る為、あの男に相談を持ち
かけることに。

その男とはもちろん。。。


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「ねぇねぇねぇねぇ!」

私はその男の店に入るなり、1人で騒ぎ立てた。

「お~!何だよ今日はやけにやかましいじゃん」

デビットだ。

この男、とにかく顔が広い。
もしかするとあの女性の事も知っているかも知れない。
そしてこの男なら、必ず私をヘルプしてくれるに違いない。

「デビット。お願いがあるんだよ」

「どっ?どうしたんだよ? 珍しいじゃん」

「うん」

「で?何?」

「う~ん」

「どうしたんだよ?何?出来る事なら何でも手伝うよ」
さすがデビット。
心強い存在だ。

「あのさ、○○通りにある△△という店。。。知ってる?」

「お~知ってるよ。あの店のオーナー、メチャクチャ可愛い
 んだよ」

「やっぱり!やっぱりそう思う?」

「おう。街でも有名な子だからね」

お~、やっぱりそうなのか!
あれだけ可愛いんだから当然だよな~

「最近さ、その子とよく道ですれ違うようになってさ。。」

「うん。それで?」

「さっき、話しかけちゃったよ」

「えっ?いきなり?」

「まぁ、軽く会釈するようにはなっていたんだけどさ。さっ
 き、思い切って話しかけちゃったよ」

「わはははは!そうなんだ!スゲェ~な。さすが日本男児だ!」

「あの子、本当に綺麗だよな」

「うん。台湾美人。日本人はああいう感じ好きだよな。ビビア
 ン・スーだろ?」

「うん。ビビアンを嫌いな日本人はいないはずだ。俺も好きだ」

「はははは!正直だな」

「デビットはあの子の事知ってる?」

「お~、もちろん知ってるよ」

「あの子を食事とかに誘えないかなぁ?」

「相談って。。。。あの子に惚れちゃった?」

「う、うん。だって可愛いんだもん」

「わはははは!」
デビットが大声で笑う。
そして
「食事には誘えると思うよ。でも。。。」

「でも?」

「本当にあの子に惚れちゃった?」

「うん。間違いない」

「そうかぁ~。みんな好きになっちゃうんだよなぁ~」

私の同意しつつもデビットの顔が曇る。。。
なんだなんだ?

「彼女、訳あり? あっ、彼氏がいる?もしかして既婚者?」

「う~ん、言ってもいいのかなぁ。。。」

「なんだよ。話せよ。気になるじゃん!」

「そうだな。話すべきだな」
隣にはリサが話を聞いているが、視線を外している。

やはり彼氏がいるのか?旦那がいるのか?

「あの子には彼氏がいるよ。しかも関係は良好だよ。残念だ
 けど」

「やっぱりそうか~。そりゃそうだよなぁ~」
山の頂上で1人浮かれていた私は一気に谷底へ落とされたよう
な気持ちになってしまった。

馬鹿な男だ。
たった1度話しかけ、たまたま彼女が相手をしてくれただけな
のに。。。いろいろ想像してしまう単純さ。

あんな美人さんのことだ。相当なイケメン君と付き合っている
のだろうな~と勝手な想像が膨らむ。

「彼氏。。。うん、彼氏がいる。彼氏。。。女だけどな」

「えっ~~~~。女?彼氏は女? 彼氏は女って。。?」

「うん。彼女はTだ」

台湾では女性の同性愛者をTと呼ぶ。
語源はTOM BOY から来ていると聞いた事がある。
日本ではあまりピンとこない単語。

ガ~~~~~ン。

頭の中で大きな大きな鐘が鳴り出した、爆音が耳の中で鳴り止
まない。

同性愛者を蔑視はしていない。
全くない。
でも、想像して欲しい。
自分が好きになった相手が。。。。


そう話すとリサが店に置いてあるパソコンを立ち上げ、キー
ボードを素早く叩く。

そしてディスプレイを私に向けた。

当時スタートしたばかりの某SNSサイト。
画面には彼女のページが表示されていた。

リサが見せてくれた画面にはあの子と彼女の「彼氏」が笑顔
で仲良くハグしている写真が写っていた。

現実を。。。。。現実を受け入れなければ。。。いけない。。

「残念だけどさ。これが現実」とデビット。

珍しくリサが口を開いた。
リサによれば、以前は男性と付き合っていたことがあるのだが、
前の彼氏が酷いDV男。
毎晩暴力を振るわれているうちに男性不信に陥ってしまったと
聞いた事があるそうだ。

当たり前だけど台湾にもDV男がいるんだなぁ~。
くっそ~、そいつが暴力なんて振るわなければ。。。
呆然としながら画面を眺め続けた。

喜びもつかの間とは正にこのことだった。

「何人もの男がアタックしたけど、彼女の心を変える事は出来
 なかったんだ」とデビット。

「そっ。。。そうなのかぁ」

まるでシャボン玉のように。。。アッという間に弾けてしまっ
た私の恋心。。。。

そして翌日には私の恋話は街中に広まっていた。

デビットのやつ。。。。

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数年後、デビットから連絡が来た。

「あの子、結婚したよ。相手は男だよ」

「へぇ~。そうなんだ」

男性不信、男性恐怖症からは解放されたんだな。
良かった。

「元気で幸せに暮らしていてくれれば。。。今はそれでいいよ。
 連絡してくれてありがとう」
とデビットに返信したあとしばらくの間、彼女と交わした会話を
思い出した。

彼女と話をしたのはあの1度きり。
ほんの数回のやりとりだけ。

こんな話をしていると、また台湾へ戻りたくなる。

おわり

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