カンボジア プノンペンで再会したデビット。
現地のでの仕事は安定し、海外に住みたいという夢を実現
させ、表情や動作、話し方から自信が溢れていた。
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デビットが運転する車に乗り込むと
「腹減った~。美味しいレストランがあるから行ってみよう」
とデビットが行きつけのレストランへ案内してくれた。
プノンペン市内の高級住宅街にあるカンボジアとタイ料理の
お店だ。
ちょっと、いや、かなりの高級店。
そんな店構えだ。
外壁はコンクリートの打ちっ放し。
店内内装もシンプルだが、楽器や家具などが飾られいる落ち
着いた店。
料理はタイのガパオライスやガイヤーンなど、私の好きなも
のをオーダーしてくれた。
タイの料理屋に比べるとどの皿も大盛りだった。
食事が済むと再びデビットの車に乗り込む。
「今日は疲れただろ?マッサージを受けに行こう」次は同じ
エリアにあるマッサージ屋へ連れて行ってくれた。
いつも私が利用している屋台のようなマッサージ屋ではなく、
スパのような高級店。
内装がとても素晴らしい。
しかし値段はタイの屋台マッサージ屋と大差なかった。
あんなにゴージャスなのに。。。人件費がタイより更に安い
という事なのだろうか?
プノンペン滞在中は毎晩このお店に通った。
食事もマッサージ屋も全てデビットが支払ってくれた。
1度位、支払いを任せて欲しいんだけどなぁ。。。
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翌日からデビットが仕事の合間と仕事が終わった後、市内観光
に連れ出してくれた。
デビットの管理するマンションの前には小学校と中学校がある。
朝はたくさんの子供達が学校に登校している。
歩いて登校する子もいれば、バイクに乗って。。。あれ???
バイク?
乗ってるのは子供。
中学生くらいの女の子が小学生の男の子を後ろに乗せて、バイ
クを運転している。
「はははは。プノンペンはまだ市内の公共交通網が発達してな
いからね。学校付近の子は歩きだけど、学校から離れた場所
に住んでいる子たちはバイク登校が認められてる。免許?さ
ぁ?どうなんだろう?
でも、子供がバイクを運転しているからって警察に逮捕され
たりはしてないから、多分、国も公認なんじゃないかな?」
とデビットが説明してくれた。
本当かどうかは分からないけど。。。。
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プノンペン市内のカフェ。
バンコクやホーチミン同様。
格好良いカフェが何軒もあるそうだ。
露店にもコーヒースタンドがたくさんあり、味も店によって様々
だそうだ。
本格的なカフェから露店。
本物志向のコーヒーと異常に甘いコーヒーまで。
選択肢も様々だ。
デビットが現地で知り合った台湾人の友達も台湾からエスプレッ
ソマシーンをカンボジアに輸入販売していて、順調に業績を伸ば
しているとのことだ。
デビットがランチの後に必ず連れて行ってくれたカフェは本格的
なコーヒーを楽しめる店で、現地の大学生やハイソな人達でいつ
も満員。
満員だけど、テーブル同士の距離があるので圧迫感は感じなかっ
た。
私が訪れた2018年にはスターバックスが現地に上陸。
すでにタイのカフェチェーンが進出しており、これから激しいカ
フェ戦争が繰り広げられるのであろう。
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夜になるとデビットのバイクの後ろに乗って、プノンペン市内を
2人乗りで疾走した。
市内にはカジノ付きの大型ホテルが何軒もあり、中国系のゲスト
で賑わっていた。
車も増えているとのことだけど、夕涼みがてらバイクで街を徘徊
する人達が多かった。
日本人居住区へも足を伸ばした。
「酒。日本酒飲もうよ」とデビット。
オイオイ、あんたバイクの運転手だろう?
「ダイジョウブダ~。警察に捕まったら賄賂を渡せば問題なし」
やはり東南アジア。
役所や警察には現金が有効なようだ。
と思っていたら、数日後。
デビットが車を運転中に信号無視。
交差点に立っていた警官に車を止められた。
すかさずデビットが現金を渡す。。。。
「金じゃない!免許証を見せろ!」と怒鳴られた。
賄賂は効かなかった。
日本人が多く住むエリアには多くの和食屋、寿司屋、拉麺屋を
見かけた。
私たちはデビットが見つけた1件の日本酒バーへ立ち寄った。
「こんばんは~」
店内へ入ると普通の日本語で出迎えてくれた男性2人。
2人の日本人スタッフさんが仕切る日本酒バーだった。
彼らがオーナーという訳ではなく、日本のIT企業が経営する日本
酒バーだった。
日本での本業もカンボジアでの事業も儲かっているので、現地で
飲食業をスタートさせている。
そのうちの1店舗だとのこと。
日本でも貴重なお酒を飲めるので、現地駐在員や地元のハイソさ
んたちで賑わっていた。
「店を開けて3年目ですけど、日本の方と台湾の方が一緒に来ら
れたのは初めてです」
と言われた。
「どっちも台湾人だと思ったでしょ?」と聞くと
「いやいや、そんなことないですよ~」と答えたスタッフさんの
顔は引きつっていた。
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ある夜。
デビットが私の為にパーティーを開いてくれることになった。
デビットはウィスキーやワイン、日本酒も買い集める。
「仲間の彼女達も来るんだ。彼女達の為にお菓子も用意しよう」と
いう事で、1軒の駄菓子屋さんに寄った。
女性1人が経営するボロボロの店舗だった。
デビットのマンションからも近く、デビットも良く利用していると
のことだった。
隣国タイのようなコンビニはまだ無く、露店はもちろん、こうした
小規模な雑貨屋がまだ商売をしていける隙間があるようだ。
二言三言、デビットはその女性店主と会話を交わしていると、店の
2階から5~6歳の男の子が大声でデビットと女性に何かを叫んだ。
女性オーナーの子供だろう。
デビットが子供に向かって手を振り、私たちは車に乗り込んだ。
こちらに住んでいる間にカンボジアの言葉を覚え、地元の人達とも
すぐに仲良くなってしまう。
こういう点は天才的だと思う。
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そしてパーティーが始まる。
彼の管理するマンション屋上を貸し切りにして、現地で親しくなっ
た友人達も集まってくれた。
台湾、香港、マレーシア、シンガポール、そして中国。
なぜか日本語を話すフランス人も混じっていた。
誰とでもすぐに仲良くなるデビット。
プノンペン市内にある公園でバスケットを楽しんでいる中華系に
片っ端から話しかけ、チームを作り、週に何度か公園でバスケを
して遊ぶ。
噂を聞きつけた他の中国系も集まり、今では結構な人脈に育てあ
げていた。
新しくプノンペンに店を開く中華系の人がいれば、デビットは仲間
を引き連れて食事に行く。
経営が安定するまで、そして新しく現地に来た中華系の仕事や生活
を少しでも支えられれば。
信用出来る人物だと認められれば、彼らの絆は深まり、投資や出資
など、関係を次の段階へ発展させていくのだそうだ。
国同士は問題を抱えていたり、つばぜり合いを展開していても、
俺たちは同じ言葉を使う同胞だ。
生まれた国を後にして新天地へ乗り込んでいる。
ここで生きていく。
これからも生きていく
助け合うのは当然だろう。
彼らからはそんな連帯感が伝わってきた。
つづく