チケット

初めての海外旅行 アメリカ

生まれて初めての海外。
そして飛行機に乗るのも初めてだった。

バイトして溜めたお金でチケット買って
初めて訪れる場所で
どんな出会いがあるのか?

飛行場の雰囲気を味わってみたい気持ちが強過ぎ、夜のフライト
なのに昼に成田へ到着してしまったりもした。

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ちょっとテンパリ気味の私を乗せた飛行機は無事離陸。

目的地のニューヨークではなくLAに到着。

NY直行便よりもLA経由のルートの方が数万円安く手配が出来たからだ。

LAで1泊し、翌日NYへ!

とは言え、学生旅行だ。
LAからNYへの直行便は高いので、フェニックス経由でNYへ。

LAのカウンターでチケットを発行してもらう。

日本語ではフェニックスだけど英語ではフィネックスと聞こえた。
「フィネックスかぁ~格好良いな~」

海外に来た!
海外にいる!!

言葉の響きひとつだけでも気持ちが上がる!

搭乗口でチケットを見せて、意気揚々と飛行機へ乗り込む私。

「?」
目の前には小さなプロペラ機。。。。
「小っさいなぁ~」
思わずそう口走ってしまうくらい、小さな小さな飛行機だった。

機内は片側2列の客席。

「アメリカ人は飛行機をバスのように使うんだ」
アメリカ旅行の経験がある知人からはそう聞いていたけど、まさか
サイズまでバスと同じとは驚いた。

座席に座り10分もすると飛行機は滑走路へ。
徐々に加速しスピード上げ、小さなプロペラ機が空へ舞い上がる。

隣の座席に座っていたアメリカ人の女性は飛行機に乗るのが初め
てで、小さな声で「オーマイガ~」を連発。
目が合うと「ごめんね、飛行機って怖いね」と小さく笑った。

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機内では1度飲み物が出ただけ。
数時間で経由地であるフェニックス、いや、フィネックスに着陸。

よほど飛行機が怖かったのだろう、隣の女の子はシートベルトを外せ
なくなってしまい、私が手助けをした。

NY行きの飛行機のフライトまで約40分。
LAから乗ってきたプロペラ機を降り、すぐさまNY行き便へ乗り継ぎだ。

やや早足で空港内を移動する。

NY行きの飛行機へ乗り込むゲートを見つけた。
「あの飛行機かぁ。今度の便は普通の大きさだな」

ポケットに手を入れ、チケットを取り出す。。。あれ?

ポケットに入れたハズのチケットが。。。カバンにしまったんだっけな?
カバンの外側、内側のポケットを確認してもチケットがない。

上着やズボンのポケットに手を突っ込んでみるけど。。。ない。

ない。。。ないない。。。どこを探しても。。。。ない。

目の前が暗くなった。
飛行場の細かい情景など覚えていない。
それくらい必死だった。

「チケット。。。あれ?どうしちゃったんだ?」

焦っている間にもフライトの時間が刻々と迫ってくる。
「やばいな。搭乗口でチケットを落としたと説明すれば何とかなるも
 のなのかな?ダメ元で聞いてみるか」

ヒンヤリとした感覚が身体に広がる。

目的地のNYが。。。とても遠くに感じた。

どうしよう。
どうしよう。
どうすれば良いんだ。

冷静になれ。
冷静になって考えろ。

そう自分に言い聞かせがら、上着やズボン、バッグのポケットに片っ
端から手を突っ込む。

冷静になろうとすればするほど焦り出す私。
何度も何度もポケットの中に手を入れる、ポケットの内側を確認する。

ない。
ない。
チケットが。。。ない。

心が折れかけている時だった。

トントン。
誰かが私の肩を叩いた。

振り返ると小さなおじいちゃんだった。
清掃員なのだろう。
頭には帽子。
制服を着ていて手にはモップとバケツを持っていた。

「これ、あんたのだろ?」
その手にはチケットが。

チケットを手に取り印刷されている内容を確認。
私の名前と行き先が印刷されている。

「はい。私のチケットです!はぁ~、良かったぁ~~~。フライトの
 時間が迫っていて。。。ありがとぐおざいます!本当に助かりまし
 た!」

「ハッハッハッ!良かった良かった。アンタを追いかけてワシも急ぎ
 足で歩いたんじゃが。。。あんた足が速いなぁ。声を掛けてたんじ
 ゃが全然聞こえてないようだったしな」

「すみませんでした。チケットの事で頭が一杯だったので」

「ok ok。さぁ、そろそろ搭乗時間じゃろ。乗り遅れたら大変だ」

「はい。本当にありがとうございました!」

「若いの。気をつけてな。have a nice trip 」

「はい。ありがとうございます。おじいさん、いつまでもお元気で!」

私は何度も頭を下げながら搭乗客が機内に乗り込む列に向かった。
最後にもう1度振り返り、おじいさんに笑顔で手を振った。

おじいちゃんも笑顔で手を振ってくれた。

あのおじいちゃんがいなければどうなっていたのかな?

予約した飛行機に乗れたのか?

チケットを買い直さなければ行けなかったのか?

そうなった場合、学生旅行の私には大きな出費になり、約2ヶ月アメリ
カ旅行に大きな影響が出ていたかも知れない。


今でも飛行機のチケットを見る度に思い出す、ヒヤッとした旅の思い出。
そして優しい笑顔のおじいちゃん。

旅は良い。

おわり


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