パーティ パーティ IN 台北 5


台湾の大物芸能人 ジャッキー・ワン主催のパーティ

業界関係者でもないのになぜかパーティに参加した私。

人懐っこい台湾の芸能人達との出会い。
そして彼らとの楽しい会話。

華やかな場での楽しい時間が過ぎていく。

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「ねぇ。可愛い子は見つかったの?」
POOとの軽い打ち合わせを終えたMが近づいてきて、私に話し
かけてきた。

あっ!
そうだった。
パーティに参加している女の子を紹介してくれるという約束
をしてたんだ。

マイケルやゴリラとの会話、そして台湾の大物芸能人のジャ
ッキーとの対面が続き、すっかり忘れていた。

華やかな場所にいるというのに、話したのは全員男。
そのウチのひとりは筋肉野郎のゴリラとは。。。

「M、本当に大丈夫なの?」
「フフフ。大丈夫よ。でも、誤解しないでね。あくまで引き
 合わせするだけよ」

「もっ、もちろん!」
台湾の芸能人やモデルさん、そのたまごたち。
可愛い女の子と話が出来るだけでも上出来だろう。

「会場を一巡りしてくれば良いじゃない。話してみたい子が
 いたら、私に声をかけてね」とMがウィンク。

ずば抜けた交渉能力。
そして不思議と人を引きつける魔力のようなものを持つM。

もしかすると、もしかするかもな。。。
などと妄想を始める私。

飲み物をお代りをする体で会場内を歩き始めた。

少し歩いただけなのに、綺麗な人や可愛い人がこんなにたく
さんいるなんて。。。

台湾女性の顔立ちが好きな私には楽園天国のような場だ。

少し会話が出来ればなんて話していた筈なのに、この中の誰
かと付き合う事になり、台北の街を歩いてる妄想が広がる。
馬鹿な私。

もう誰でも良いんじゃないか。。。そう思いながら会場内を
歩いているときだった。

1人の女性の姿が目に入った。

ストレートのロングヘア
つやつやの黒髪がライトに照らされていて美しい。
色白で円らな瞳。

会場内にいるタレントさんやモデルさん達のキラキラとした
雰囲気とは違う。。。夜空に浮かぶ満月のような静かな輝き
を放っている。

立食用のテーブルに1人。
テーブルの上には小さなお皿とティーカップが置かれていた。
優しい笑みを浮かべ、周囲に暖かい視線を送っていた。

誰と会話している訳でもないのに、とても楽しそう。

でも、ちょっと陰があると言うか。。。儚さを感じる。

「あんなに綺麗な人なのに、誰も話しかけたりしないんだな。
 高値の花。。。そんな存在なのかも知れないな」

そう思わせるような独特のオーラを発していた。

よし!あの子にしよう。

このまま話しかけても良いような気がするけど、成功の確率
を上げる為には、Mの強力が必要かも知れない。

そう思いMのいる場所へ引き返す私。

彼女を見つける前に「綺麗」「可愛い」と思った女性の事は
全て頭から消えていた。
それほどのインパクトがあった。

一直線にMの元に戻ってきた私に
「良い子が見つかったみたいね」とMが微笑んだ。

「うん。いたよ。見つけたよ!」
「あらあら。鼻息が荒すぎよ。落ち着いて。ちょっと一杯飲
 んで落ち着きなさい」とMがグラスを差し出した。

「う、うん。」
Mの差し出したグラスを受け取り、ゴクリ。。。うぇ~ウィ
スキーだ!ウーロン茶じゃないのかよ~~~!

「それで?どの子?私が連れてくるから」
「本当に大丈夫?」

「大丈夫よ。任せなさいって」
「う、うん」

「で?どの子?」
「あそこ。あのテーブルに1人でいる女の子」
と周囲に気付かれないように小さく指を差す。

私が指さす方向に視線を送るM。

「どれどれ?うん?」

そして次の瞬間だった。

Mは表情を変えず、私の方を顔を近づけた。
そして。。。
「あの子はダメよ」
とキッパリ。

えっ?
どうして?
なんでダメなの?

「えっ?どうして???紹介してくれる。誰でも紹介してく
 れるって言ったじゃん」

「あの子はだ~め。ダメなのよ」

「どうしてさ?」
「こっちに来なさい」Mが私の腕を引きながら歩き出す。
そして私を廊下へと連れ出した。

「なんでダメなのさ?」
「あの子は。。。特別なのよ。」

「もう彼氏がいるとか?」
「まぁ。。。そんなもんね」

「やっぱりそうかぁ~。あんなに綺麗なんだもんなぁ。彼氏
 くらいいるよなぁ~」
と言いつつ
「でもさ、話。話くらいはしても大丈夫だよね?」と諦めの
悪い私。

「だ~め」とMはつれない返事。

「話をするのもダメなの?」
「そうよ。話をするのもダメ。近づくことさえダメなの!」

そしてMは私の耳元に口を近づけ、こう囁いた。

「あの子。。。ジャッキーの愛人よ」

ガ~~~~ン!
ジャッキーの。。。あいじん。。。

あんなに可愛い女の子が普通のおじさんにしか見えないジャ
ッキーの愛人。。。。

力が抜けてしまった。。。。
なんであのオッサンが。。。
しかも奥さんではなくて愛人。。。。

「なんであの子がそんなことしてんのさ」
「知らないわよ。でも、彼女がジャッキーの愛人だという事は
 業界内では公然の秘密。だから誰も声をかけたりしないのよ
 」

「なんだよジャッキー!愛人ならこんなところに連れてくんな
 っての!」
と、なぜか半ギレした私。

「理由は分らないわ。それが彼女が選んだ道だわ。それはあな
 たには関係ないでしょ?」
「た、確かにそうなんだけど。。。なんだかぁ~」


「そうかぁ~。。。彼女を見た瞬間、身体に電流が走ってさ。
 Mに紹介を頼む前に話しかけちゃおうかな?なんて思っちゃ
 たんだよね~」
冗談めかしてMにそう伝えると、Mの表情が変わった。

「もしそんなことしたら、あなた日本には帰れなかったかも。
 台湾の海に捨てられていたかも知れないわよ」とM。

「まさか。話しかけたくらいで?」
「ジャッキーは台湾芸能界の大物よ。彼の顔に泥でも掛けてみ 
 なさい。大変なことになる」

「そんなものかね。。。。」

半信半疑だったけど、可能性がゼロではないのだろう。

再び会場内に戻った私。
マイケルやゴリラが迎えてくれた。

そしてまた、ゴリラのトークで笑いの渦が巻き起こり始めた。
ゴリラは顔が濃い分、表情が豊か。
トークが上手く彼の近くにいると本当に楽しい。

腹を抱えてゲラゲラと笑いながらも、ついつい横目であの子を
見てしまう私。

「あの子がねぇ。。。」

人にはそれぞれの生き方がある。
分ってはいるけれど。。。今ひとつ納得出来ない私がいた。


(おわり)

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