パーティ パーティ IN 台北 2

パーティ当日

行く気がなかったのにも関わらず、うきうきしている自分。
レディMに貰ったTシャツ。。。全然似合ってない。
まぁ、いいや。気にしない、気にしない。

ピンポーン。
ホテルの部屋のチャイムが鳴る。

レディMが迎えに来てくれたんだ。
彼女にしては珍しく時間ぴったりだ。

仕事は出来るけど朝寝坊の常習犯で時間にルーズなMだった。

「は~い」
バッグを肩に掛け、ドアを開く。

「オハヨウゴザイマス!」
あれ?
Mじゃない。
立っていたのはMではなく、彼女の会社で働くスカイだった。


スケボーや自転車が大好きな今時の若者。
サーフィンの上手いと聞いた事がある。
見た目は厳つい兄ちゃんだけど、仕事が出来て仲間思い。
取引先からは絶大な信頼を受けているMの懐刀。


「あれ?スカイ?Mは?」
「すみません、今日のパーティに先駆けてマスコミ向けの記者会見
 を開く事になってしまい、今朝早くに台北へ行く事になってしま
 ったようなんです。ミーティングをしなければならないようで」

「そうなんだ。相変わらず忙しいね、Mは」
「はい。代わりに僕が車で台北まで送ります。もちろん、僕や他の
 スタッフ達もパーティには参加します。雑用ですけどね」

会社の大黒柱。
なのに全然偉そうにしていない。
スカイのこんなところが人から好かれるのだろうなぁ。

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スカイの運転する車に乗り、いざ台北へ。

「お昼、まだでしょ? これ、良かったら食べて下さい」
ハンバーガーとポテトだ。

「週末のこの時間、高速道路が混むと思うんです。そうなるとお昼を
 食べている余裕がないと思って。ハンバーガーですけど。。」

出来る男だ。

「ありがとう。いただきます」

スカイが買ってくれたハンバーガーとポテトを頬張りながら、スカイと
会話した。

「今日のパーティの主催者って台湾の芸能人なんでしょ?」
「そうですよ」

「有名なの? ジャッキー。。。チェンじゃないよね?」
「アッハッハッハ。違います違います。ジャーーキー・ワンですよ」

「やっぱりそうかぁ~。ヒースがジャッキー・チェンだって言うからさ 
 ぁ。。。そんな訳ないとは思いつつ、ちょっと期待しちゃったんだよ
 ね」
「ヒース、適当なところありますもんね。でも、ワンは台湾では超有名
 ですよ。テレビ番組、たくさん持ってますからね」

「へぇ~。そんな凄い人なんだ。スカイもその人のファン?」
「いやぁ、バラエティ番組のおじさんですからね。俺、あまり興味ない
 ですよ」

「そうなんだね~」
「でも、今日のパーティにはJDが来るかも知れないんですよ」

JD
台湾の歌手で反戦ソングなどのメッセージ性の強い歌を歌ったり、HIP
HOP調の歌を披露したり。当時の台湾では珍しい存在で、ストリート系の
若者を中心にカリスマ的な人気を博していた。
日本の有名ミュージシャンとも親交が深く、日本にもファンがいた。

「あのJDが?」
「はい。ワンとは仲が良いですからね。忙しいからスケジュール調整が
 出来るか分らないので、マスコミには発表していないのですけど。も
 しかすると。。です」

「へぇ~。それは凄いな!」
「JDのこと、知ってるんですか?」

「名前だけはね。日本にもファンがいるしさ」
「ですよね~。来たら写真撮ってもらおうと思ってて」

「良い記念になるね」
「はい。それにウチの会社とも契約が成立しそうなんですよ。ワンの仲
 介で。決まればウチのブランドの服を着てステージに立ってくれるか
 も知れません。とても光栄だし、そうなったら、ウチの会社ハネます
 よ」

「それは凄いなぁ」
Mの営業力。。。図々しさと言った方が良いのか。。は相当なものだ。

「パーティにはどんな人が来るのかな?アパレル業界の人が多いのかな 
 ぁ?」
「業界の人は少ないですよ。ライバル意識が強いので。Mは今、嫉妬の
 対象です」
そう言ってスカイは笑った。

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彗星のように現れ、瞬く間にビジネスを拡大したレディM。
長く業界にいる人達から見ると厄介な存在だろう。

しかしMにも過去がある。
街の小さなジーパン屋で来る日も来る日も悪戦苦闘。
口達者でコミュニケーション能力が高く、お客さん1人1人の顔と名前
を覚え、仕入から販売、諸々の管理まで全て1人でやりくりしていた。

資金繰りに困った際には親兄弟に頭を下げて、お金を貸してもらった事
もあるそうだ。

そんなMがある日、友達の紹介でヒースと出会い、人生が変わるキッカ
ケを手中に収めた。
そこからのMは更に頑張り、今の地位を手に入れた。

でも、そんな彼女の過去を知るものはごく僅かだ。

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「出席するのは芸能人がメインだと思います。ワンが面倒を見ている若
 い子たちなので、それほど有名な人は来ないですけどね」
「そんな場所に俺が行っても良いのかね?」

「はははは。大丈夫ですよ。あなたは日本人だから。それだけであの場
 にいる価値はあります」
「そんなもんかねぇ」

「はい。ここは台湾。自由がルールです。楽しみましょう」
「そうだね。ありがとう」

まだ若いのにスカイの言葉には物凄く説得力があった。

仕事や遊び。
台湾と日本の違い。
スカイの日本に対する印象などを聞いてみた。

「日本は全ての面でお手本になる国ですよ。商品のクオリティの高さ、
 仕事をする人の真面目さ。その他にも音楽や漫画、文化などもそう。
 僕たち台湾人の理想を実現しているワンダーランド、それが日本な
 んですよ」

多くの台湾人同様、スカイも日本が大好きなようだった。

「忙しいから無理かも知れないけど、日本にスキーやスノボをしに行
 きたいんですよね~。ウィンタースポーツ、台湾では出来ないから
 。雪、見てみたいなぁ」

そんな話が出た後に
「あとは日本の女の子。なんであんなに可愛いんですかね~?」
とスカイ。

「台湾の女の子もめちゃくちゃ可愛いじゃん」と私。
「いやぁ、そうですけど、日本には敵わないですよ~」

このセリフはスカイだけではなく、台湾女性からも良く聞く。

私たち日本人にとっては単なる日常でしかないことが、彼らにとって
は夢の宝庫。
理想郷。
それが日本なのだ。

「渋谷とか代官山でナンパしてみてぇ~~」
スカイは車を運転しながらそう言って笑った。

仕事も遊びも。
そして女の子に対しても。
興味のあること全て対して肉食系。
チャンスは待つより引き寄せる。

スカイはそんな男だった。

そうこうしている間に台北に到着。
思ったより渋滞はしていなかった。

スカイが運転する車は市内の高級エリアにある中規模な商業施設に到着。

3階建てのシンプルな作りの建物。
フロアー辺りの面積はそれほど広くなく。

カフェやアパレル関連のショップが5~6店舗、ここでの営業が決まっ
ているらしい。
その中にはMの取引先も含まれていた。
ショップは1Fと2F。
3Fはジャッキーのオフィス。
今夜のパーティは3Fで開かれる。


「車を駐車場へ入れてきますので、この辺で待っていて下さい。すぐに
 戻ります」
そう言ってスカイは近くにある駐車場へ向かった。

建物の前でスカイを待つ。

忙しく走り回るスタッフらしき人たち。
談笑するビジネスマン風の人たち。

彼らを取り囲むようにしてカメラを抱えているのはマスコミ関係者だろ
う。

活気が満ちあふれている。
新しい事が始まるこの場所への期待感が集まっている。
その熱気が伝わってきた。

つづく


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