台湾の夏休み
その期間、工場にバイトで働きに来ていた地元の女子高生。
海外留学経験もないのに綺麗な発音で英語を話す女の子。
彼女の勧めもあり、中国語を勉強することになった。
そして先生は彼女。
中国語を勉強する気になった。。。というと嘘になってし
まうかも知れない。
彼女が先生を引き受けてくれる事になった翌日。
「ねぇ、中国語の勉強はいつから始める?どこでやろうか?」
と言い出せず。。。そして彼女からも具体的な話はないまま
仕事が終わってしまった。
彼女は2人の妹を連れて、「バイバイ」と手を振り自転車に
乗り、工場から去ってしまった。
なんだよ~
こっちから切り出さないと彼女も答えようがないじゃん!
と自分に腹が立った。
もしかすると彼女はその場の勢いで先生を引き受けるなんて
言ってしまったんじゃないかな?
と不安に思ったりもした。
初めて会う外国人に彼女が親切に中国語を教える理由なんてな
いよなぁ。。。。
と浮かない表情でホテルに帰った。
その翌日の朝。
いつものように妹2人を連れて彼女が工場へ出勤してきた。
「早!」(おはよう)と声を掛ける。
「早!」(おはよう)と彼女は笑顔を見せてくれた。
でも肝心な話が出来ないまま仕事が始まってしまった。
よし、昼休みになったら切り出そう。。。。何も言えず。
よし、午後の仕事が始まる前に聞いてみよう。。。何も言えず。
虚しく時間だけが過ぎて行く。
言い出せない自分が情けなく思えた。
18時。
午後の仕事の終わりを告げるベルが工場内に響き渡る。
はぁ~、終わっちゃったよ~。
何も言い出せないまま今日も虚しく終わっていくのかぁ~~~
バッカじゃないの!と自分に腹が立っていた。。。
そのとき
ツンツンと私の背中を突く指の感触。
振り返ると。。。
「時間、ありますか?」
彼女がいた!!
「あっ、あるよ!」いきなりの事で少し焦った。
「じゃあ、勉強しましょう」
「やっ、たった~~!」と大喜びする事もなく、
「あぁいいよ」なんて大人ぶった返事をした。
心臓が大きく動いているのを感じた。
馬鹿だな~
晩強だよ。勉強するだけなのに何故こんなに心臓が。。。
一体あの時、私はどんな表情をしていたのだろう。
「行こう」と彼女が自転車に乗る。
「う、うん」と私は彼女に続いてペダルをこぎ出した。
工場付近の道は道幅が狭い割に車の交通量が多かった。
工場や農家、住宅街でもあったからだろうか。
その為、私は彼女と並んで自転車を漕ぐことが出来ず、
ただ彼女の後に付いて走るしかない。
一体、どこで勉強をするのだろう?
毎朝サイさんの工場へ通う道を走っていた。
10分ほど走ると。。。。学校に到着した。
私が宿泊しているホテルから2ブロックほど離れた小学校だ。
「ここで勉強するの?」と聞くと彼女は振り返ってニコリと
笑った。
「今は夏休みだよね?学校に入れるの?」と聞いた私の質問
には答えず、彼女は校門から校庭へ入っていく。
「だっ、大丈夫なの?」と聞いた。
振り返りもせず、彼女はずんずん校舎へ向かって歩いていく。
校舎の門は開け放たれていた。
下駄箱が設置されたスペースで靴を脱ぎ、彼女は勝手に校内
へ上がってしまった。
私も靴を脱ぎ、彼女を負った。
廊下がひんやりとした。
ガラガラガラ。。。。。
少し先にある教室のドアをスライドさせる音。
「こっちです」と彼女が笑顔で呼びかけてきた。
「う、うん」
私は彼女の方へ歩みを進めた。
つづく