台湾の思い出 南国での出会い 3 出張という名の一人旅 24話

サイさんの工場

朝になるとパートのおばさん達やってくる。
夏休みなのでバイトの子供達もやってくる。

朝から大声や笑い声。
大らかな笑顔を見ているだけで楽しくなってくる。
言葉も分からないのに、私も一緒になって笑ってる。

トントン
「?」
誰かが肩を叩いた。

振り返ると彼女だった。

「おはよう」と私
「おはようございます」と彼女
小さな、でも芯の強さが伝わってくる彼女の声。

この時間、この短い時間が毎朝の楽しみになっていた。

「あのぉ。。。」
「うん?何?」

「あのぉ。。。。。。。」
「どうしたの?」

「中国語、勉強した方が。。。。中国語を勉強した方が
いいですよ」

うわぁ!
痛いところを突いてきたなぁ~

苦笑を浮かべながら
「うん、そうだよね~。でも難しいよ~。テレビの字幕を見
ながら勉強したりはしてるんだけどさ。みんなの会話を理解
するまでは。。。。」と話したところで

「ハハハハッ」
と彼女が笑い出した。小さな笑い声だった。

「みんなが普段話しているのは台湾語ですよ。中国語じゃあ
りません」

「えっ?そうなの?中国語じゃないの?」
中国語と台湾語の存在は知っていたけど、公教育では中国語
を教えていると聞いていたので、普段の会話は中国語なのか
と思っていた。

「ここはローカルな町でおばさん達は年齢層が高い。なので
普段の会話は台湾語なんです。私?私は台湾語も分かるけど
学校の友達とは中国語です。世代や住む地域によって、どち
らを使うか分かれますよ。南部の人達は比較的台湾語を好む
人が多いです。ここ竹南だと。。。う~ん、半々くらいかな」

「そうなんだ」

「はい。でも、お仕事の事を考えると中国語の方が良いと思
いますよ。シンガポールなどの中華系の人達も同じ言葉を話
してますから」と彼女はハキハキとした口調で説明をしてく
れた。

「そうかぁ~。。。。勉強した方がいいかな」と大してその
気もないのに私はそう答えた。

「はい。絶対に勉強した方が良いです。台湾の事、もっと深
く知る事が出来ると思うんです。あなたには台湾の事、もっ
と知って欲しい」

確かにご飯は美味しいし、ややお節介だけど人は優しいし。
台湾を好きになり始めてはいた。でも、中国語、難しいんだ
よな~。。。熱心に勧めてくれる彼女には悪いけどあまり気
が進まなかった。

「あのぉ。。。。。」
「うん?どうしたの?」

「もし。。。もし良かったら、私が教えます。私があなたに
教えます」

彼女が中国語を。。。??
教えてくれる。。。???

頭の中で整理する時間が必要だった。

「えっ?いいの?」
「は、はい。大丈夫です。毎日は無理ですけど。。。。週に
2日位なら大丈夫です」

「なら教えてもらっちゃうかな!勉強したいと思ってたし」
そんな気なかったのに、そう答えていた。

瞬時にこのチャンスを逃していけない!そう思った。

胸の鼓動が高鳴っていた。
嬉しくて嬉しくて飛び上がりたい気持ちだった。
でも、私の方が年上だ。冷静に。。。なれないけど装わない
と!
と自分を落ち着かせてから

「どうしよう、その。。お礼というかさ。時給を決めようよ」
と大人っぽい取り決めを持ちかけると

「お、お金は要りませんよ。いただけないです。私、先生じゃ
ないし。。。」目を伏せた彼女。

「それじゃあ悪いよ。君の時間が。。。」
「だ、大丈夫。。。大丈夫ですよ!」
と私の言葉を小さな声で遮った彼女。

笑顔に力強い視線をこちらに向けていた。

「それじゃあお願いしちゃおうかな」
「はい。任せて下さい!」

つづく

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