台湾の思い出 南国での出会い 2 出張という名の一人旅 23話

英語が話せる女の子。

彼女の存在に気が付いてからは、不思議と工場内で
すれ違う事が増えた。
いや、元々すれ違っていたのかも知れない。

すれ違いざまに「hello」と簡単な挨拶を交わすよ
うになった。

彼女の回りにはいつも2人の女の子がいた。
彼女よりもっと年下の、小学校3,4年生位の子達
だ。

妹だろうか。。。しかし顔が全然似ていない。
親戚の子だろうか。。。

ある日のこと。
サイさんが私の元に駆け寄ってきて何かを話し始め
た。
顔は強ばっていなかったけど、必死に何かを説明し
ている。
問題が起きているのだろう。

私は両手を広げて首を左右に振るしか出来なかった。
サイさんは顔を天井に向けて「どうすれば分かって
もらえるだろう」というような表情を浮かべていた。

その時だった。
あの子が近づいてきてサイさんに話しかけた。

サイさんが早口で何やら説明をし出した。
彼女はサイさんの言葉をひとつひとつ丁寧に聞き、
時々サイさんに質問をしていた。

ひと通りサイさんの説明を聞いた後、私の方へ顔を向
け、英語で状況を説明し始めた。

今となってはどんなトラブルだったかは思い出せな
いけど、生産を1次ストップせざるを得ないような
事だったと記憶している。

工場のラインを止め、私は台北オフィスへ電話し、
状況を日本の会社へファックスを送ってして欲しい
と伝えた。

助かった。
本当に助かった。

落ち着いた頃、私は彼女の側に行き「謝謝」と感謝
の気持ちを伝えた。

彼女は仕事の手を止め、静かに笑顔で答えてくれた。

台湾の片田舎で妹が出来たような。。。。
いや、そんな感覚では。。。。ない。

それから彼女と話す機会が日に日に増えていった。

彼女は竹南にある学校に通う高校2年生。
夏休み中、お小遣いを稼ぐために工場に働きにきて
いる。
一緒にいる女の子達は彼女の妹だった。

英語は英会話スクールなどで勉強している訳ではなく、
中学高校で勉強した程度だという。

「それにしては発音が綺麗だよね。留学経験でもある
のかと思ってたよ」

「えっ?私、私の英語に自信なんてないですよ~」と
小さく笑った。

かっ。。。。可愛い。

とても静かでシャイな女の子。

向こうからは決して話しかけてはこないけど、こちら
から話しかけると笑顔で応対してくれる。

小さな声で綺麗な英語を話す女の子。

始業前と終業後。

自転車置き場で良く会話をするようになっていた。

我々が会話する光景を見ているパートのおばちゃん達は

「台湾の女性は世界一だ。あんたもその子を日本へ連れ
て帰れ」と冗談を言ってくる。

「no no」と言いながらも自分の気持ちは。。。

それもアリかな。。。。

いかん!
ダメだろう!

相手は高校生だ。
でも。。。いい感じの子だよなぁ~

心の葛藤が芽生え始めてしまっている。

当時、私は24歳。
彼女は17歳。

年齢差はそうでもないけれど、社会人と学生だ。
しかも相手は外国人。

ない
ない
ない
あり得ないだろう。

必死だった。
必死で自分の気持ちにブレーキペダルを踏んでいた。

ブレーキをかければかけるほど、その思いが強くなっ
ていくのを感じていた。

つづく

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