台湾の思い出 南国での出会い 1 出張という名の一人旅 22話

台湾の夏休み。

近所に住む子供達までが工場に来て仕事をしている。

パートしている親の子供もいれば、自分たちだけで働きに来ている
子供達もいる。

高校生や大学生ではなく、小学生達だ。

日本だったら問題になっているだろう。

就業前は彼等の話し声や笑い声で工場内が賑わう。

何を話しているのか相変わらずサッパリ分からないけど、子供達の
笑顔を見ているだけで、こちらも楽しくなってくるから不思議だ。

数人の子供達が私に近づいてくる。

helloと声を掛けると一目散に逃げていく。

そしてまた戻ってくる。

声を掛けるとまた逃げて、また戻ってくる。

その集団の中の一人が1枚の紙を手に私に近づいてくる。

その紙を受け取る。

「何だろう?」と紙を広げてみる。

「你是那國人?」(あなたは何人ですか?)

と書いてある。

「我是日本人」(日本人だよ)
と変な発音の中国語で答えた。

子供達は顔を見合わせてニコニコとしている。

可愛いな。

そうこうしているうちに始業のベルが鳴り、仕事が始まる。

子供達も持ち場に付き、仕事を始める。

クリスマスツリーを入れる箱を組み立てる比較的単純な仕事が
中心だ。

笑顔が消え、真剣な表情で箱を組み立てていく子供達。

この子達の時給って幾らなんだろう?

そんな事を考えながら、私も仕事に取りかかる。

日本への納期はまだ先。
とは言え、日々納期は迫ってくる。

子供達がいる間に少しでも仕事を進めておきたい。

出来上がっているクリスマスツリーの検品を済ませ、パートの
おばさん達に「ok」と伝える。

おばさん達はクリスマスツリーを別の場所へ運び、子供達が組
み立てた箱に入れていく。

そして新たに出来上がったツリーが運ばれてくる。
検品して問題のないものをおばさん達に運んでもらう。

不良品も減ってきた。
パートのおばさん達も慣れてきたようで作業が早くなってきた。

順調順調。

彼等の働きっぷりを頼もしく思いながら仕事をしているときだ
った。

誰かが私の肩を叩く。

振り返ると
「これ、壊れてますよ」
と検品済みのクリスマスツリーを持つ女の子が立っていた。

「本当?ありがとう」
どこが壊れているのかチェックしようとすると

「ここ。このオーナメントの星が壊れてるんです」

クリスマスオーナメントの1部はカラス製。
ツリーの頂上にある星もガラスで出来ている。
その星が何かの拍子で欠けてしまったようだった。

「あっ、この星ね。ありがとう。見逃してたよ。助かった」

とここで気が付いた。

英語だ。
しかも綺麗な発音の英語。

「英語、話せるの?」
女の子に聞いてみた。

「はい。学校で習ってますから」

発音が。。。。綺麗だ。
自分の英語が恥ずかしくなるくらい、彼女の英語は綺麗だった。

彼女は周囲の子供立ちに比べると年齢が上、高校生くらいだろう
か?

華奢ではあるが、背は高い。
ショートカットがとても似合う女の子。

久々に英語を話す事が出来た嬉しさから、もう少し会話を。。。
と思ったけど、工場は稼働中だ。

次々とツリーが出来上がり、私の目の前に運ばれてくる。

「謝謝」と中国語でお礼を伝える
「不客気」(どういたしまして)
と笑顔で彼女が応えてくれた。

高校生くらいの子も働きに来ていたんだな。

それが彼女との出会いだった。

つづく

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