台湾の思い出 怖い話 2 出張という名の一人旅 19

午前11時30分
工場の昼休みが始まる時間だ。

今日のご飯は何だろう?
サイさんの家でいただくお昼ご飯。
これがちょっとした楽しみになっている。

美味しい水餃子はほぼ毎日食卓に並ぶ。
あんなに食べても全然飽きが来ない。

サイさんが笑顔で
「吃飯 吃飯 !」(ごはん ごはん!)
と話しかけてくれる。

「謝謝!」と答え、サイさんの後について工場の門を出た。

工場の外に1台のバイクが止まっている。
誰だろう。。。
良く見ると昨日ご飯を一緒に食べた真面目君だ。

サイさんと打ち合わせでもあるのだろう。

サイさんが真面目君に話しかけ、何やら会話している。

サイさんが振り向き、私に何か話している。

全然分からない。

真面目君がバイクから降りて私に近づき、バイク用のヘルメット
を手渡す。

えぇ?どういう事???

サイさんは笑顔で「一起去 吃飯!」(彼と一緒に昼ご飯食べてきな)
と言っている。

あっ、そういう事かぁ~
前もって言ってくれれば良いのになぁ。
まぁ、こういうところも台湾風なんだな。

そう思い、サイさんとのお昼をキャンセルし、真面目君のバイクの後
ろに座る。

今日はアウトレイジ男はいない。
ということは会話が。。。。
言葉が通じないし、この真面目君は口数が少ない。。。まぁ、ご飯を
食べてれば自然と話も出てくるだろう。

前日とは違う店に案内してくれた。
ここも台湾料理。
昨日と同じくビールでコップを洗う真面目君。

メニューを見せられるけど何の料理か全然分からないので
「都 ok 」(何でもいいよ)と答える。

3~4品の料理が運ばれてきた。
箸を伸ばし、料理をいただく。

う~ん、ここも美味しい!
地場の美味しい店。
小さな町だけど、まだまだたくさんあるのだろうな~

その後に起きる悲劇など知るよしもない。
のんきに食事を楽しんだ。

食事が終わり、真面目君がバイクで工場まで送ってくれた。
会話はほぼなく食事しただけで終わってしまったけど、真面目君の
印象は悪くない。

また食事に行くチャンスがあれば、そのときまでにもう少し中国語
を勉強しておこうかな?

サイさんの工場に戻り、午後の仕事スタート。

翌日
午前11時30分
さ~て、今日はサイさん名物水餃子が食べられるかな~
と期待して工場の門を出た。

またバイクが止まっている。
手にヘルメットを持った真面目君だ。

今日も来てくれたのか!

サイさんが行ってきな!とジェスチャーで促す。
そして真面目君のバイクにまたがり、竹南の中心部へお昼ご飯。

翌日。
午前11時30分。
工場を出る。。。。。いる。。。真面目君が待っている。

せっかく来てくれたんだし。。。今日も真面目君とご飯に行くか。

翌日もその翌日もお昼に工場を出ると真面目君が待っている。

そんな日々が2週間ほど続いたある日。
その日は大雨が降っていた。

お昼休みが始まる。
さすがに今日は来ていないだろう。。。。いる。
カッパを着て手にヘルメットを持った真面目君が。。。。

毎日毎日工場の外で待たれている事に対して窮屈な思いが募って
きていた。

「下雨、不要去外面」(雨だから外には行きたくない)
と伝えるが、
「没問題」(問題ないよ)と真面目君。

いやいや、君は問題ないのだろうけど。。。こっちの事も考えて
よ。

冷たいと思われても仕方ないやと思い、私はサイさんの家に入っ
た。

サイさんの家で食事をしている間、仕事をしている間、真面目君
の事が頭の片隅にある。

真面目君の行動に対する拒否感が芽生え始めていた。

18時
工場の仕事が終わった。

ベイビーが「雨が止んだよ。また明日ね。」と話しかけてきた。

「明天見!」(またね)と手を振り、工場の外へ。。。。

いる。。。。
真面目君がヘルメットを手に。。。。私を待っている。。。

つづく

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