10年近く前
母とタイのバンコクを訪れたときの思い出
仕入先のあるエリアへ向かう為、ホテルを出発。
気温は高いけど日本より湿気が少なく気持ちの良い暑さ。
青い空に白い雲が浮かんでいる。
南国の首都 バンコクで見るこの空が好きだ。
ホテルからゆっくり歩いて駅へと向かう。
舗装はされているもののところどころ路面が窪んでいたり
穴が開いていたり。
ベビーカーを押している家族連れが苦労している場面をよ
く見かける
「足元が悪いから気を付けてね」と母に言葉を掛けながら
駅を目指す。
心地良い暑さ。。。とは言え暑い。
すでにうっすらと汗ばんできた。
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移動に使うのはBTS
人気の韓国ボーカルユニットではなく高架鉄道。
バンコク市内の主要なエリアを結ぶインフラで渋滞を避け
目的地に移動できるのでとても重宝している。
バンコク滞在時は乗らない日はないくらい利用しています。
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バンコク到着日に購入したパスを使い駅プラットフォーム
へと移動して電車の到着を待つ。
高架鉄道というだけあり高い場所を走る電車。
駅プラットフォームからバンコク市内を高い場所から眺める
ことが出来ます。
ときおり吹いてくる風が心地よい。
「暑いけど風が涼しくて気持ち良いね~」
母もこのバンコクが大好き。
もう何回か訪れているので新鮮な気持ちというより帰ってき
た。。。そんな感覚で滞在を楽しんでくれている。
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「みんな元気にしてるかな?」
現地仕入先で働くスタッフたちとの再会を楽しみにしている
母と会話をしている間に電車が到着する。
運行本数は多いのでそれほど待つことなく乗車移動出来る。
アナウンスのあと、ほどなくして車両が駅に滑り込んでくる。
ドアが開くと車両の中からはキンキンに冷えた冷気がプラッ
トフォームに流れ出してくる。
この瞬間がまた気持ち良い。
駅で降りる人をやり過ごす。
気の早い現地人や外国人の中には降りる人がいなくなるのを
待つことなく座席を目掛けて車内へ入ってしまう人もいるが
外国にいるからなのかあまり気にならない。
「足元に気を付けてね」
母の肩に手を置いて車内へ入る。
車内は満員ではないものの座る座席は空いてなかった。
移動距離は短いけど母には休憩がてら椅子に座って欲しかっ
たけど空いてないなら仕方ない。
「すぐに着くから大丈夫だよね?」
そう母に確認するように聞くと
「うん、ここから3つ目でしょ?」と母。
何度も何度もこのBTSに乗り移動をしているので移動先まで
何駅なのかや良く使う駅名などは覚えている。
車窓の外を流れていくバンコク市内の景色を母と二人で眺め
ているとBTSがゆっくりと動き始めた。
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車両が動き始めてすぐ
視線を車内に向けたときだった。
褐色の肌を黒いTシャツと黒いデニムパンツで固めた若者集
団が車内の一部の座席を占領しているのが視線に入った。
車内で悪さをしているのではないけれど彼らが醸し出す危険
な雰囲気に車内にいる乗客たちも少し引き気味だ。
彼らに対して悪い感情は持ってはいなかったけど、なんとな
く視線を外すことを忘れてしまっていた。。そのときだった
「!」
その極悪集団の一人と目が合ってしまったのだ!
私と視線が合った若者が隣に座っている仲間の肩を叩いて、
何かを伝える。
肩を叩かれた仲間もこちらに視線を送り、何か蔑むような視
線をこちらに向けたと思ったら、すぐに視線を戻し、仲間に
何かを告げている。
2人の会話が耳に入ったのだろう。
その他の仲間たちも一斉にこちらを睨みつけている。
向こうは7人。。。
こちらには母親がいる。。。
絡まれたらどうしようかな。。。
一人くらいは倒せるかも知れないけど囲まれたら一巻の終わ
りだろう。。。
車内にいる人たちは気付いているのかいないのか全く無関心。
リーダー格の男が立ち上がると他のメンバーたちも席を立つ。
これは。。。参ったな。。。
やるならあのリーダー格の奴に一撃見舞うしかないだろう。
でも、問題はその後だ。
仲間たちがビビッてくれればよいのだけど。。。
ここはタイ。
国技であるムエタイを習っているなんてこともあるかも。。
そう思いながら拳を握る。
いつでも。。。来い!
と思った瞬間
極悪軍団のリーダー格の男は指先を揃えた優し気な手を自分た
ちが座っていた座席へ向ける。
顔は。。。笑ってない。
けど座って下さいという意味のようだけど。。。
リーダー格の男が再度座席に向けられた。
やっぱり座って下さいということのようだ。
でもやっぱり笑顔はない。
微笑みの国タイランドなのに。。。
母に「座って下さいって席を空けてくれたよ」と言うと
「優しい人たちだね」と言いなが座席の方へ歩いていく。
鈍感なのか肝が座っているのか?
母はこういうときにビビらない。
「揺れるから気を付けて」と声をかけると
「うん」と歩きながら返事をする。
もう座席にしか意識が向いていないかのようだ。
座席に近くに来たとき
「ありがとう」と母が若者たちに日本語で声をかける。
彼らの表情は変わることはなかったけど、小さくお辞儀を返し
てくれた。
タイでは日本が大人気。
ありがとうが感謝を意味する言葉ということは大半の人が知っ
ている。
さりげない。。。というか変わりづらい優しさだったけど、と
ても有り難く、また心が温かくなったのを今でも忘れない。
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タイに限らず東南アジアではお年寄りや高齢者にはとても優し
い。
妊婦さんや大きな荷物を抱えている女性には声を掛け、席を譲
る姿をよく見かける。
昔は日本でも同じ光景をよく見かけた。
と話す人も多い。
でも。。。でも昔話で終わらせていいのかな?
これからの日本でも同じ光景をたくさん見かけることが出来る
ようになれたらな。
経済や技術の分野ではやや落ち着いてきた感のある日本だけど
人がのびのびと、そして優しく心地よく過ごせるような国にな
ると良いなぁ~
そんな日本がめちゃくちゃ格好良くて大好きだ!と言ってくれ
る外国人が増え、この国に生まれて良かったと胸を張って言え
る人が一人でも増えてくれたらいいな。
(おわり)