台湾の思い出 香港社長 4 出張という名の一人旅 33話

台北で出会ったミスターブーにそっくりな香港社長こと
小野田社長。

その仕事っぷりは逞しく、またどこか爽やかな風を纏
っていた。

上司から「台北で会おう」との電話を受けた際、面倒
臭いとしか思えなかったけど、小野田社長との出会い
はとても価値のあるものだった。

台北から竹南へ向かう急行列車の中。
香港のオフィスで忙しく働いている小野田社長の姿を
想像した。

「香港かぁ。。。いつか行ってみたいな」

香港。

ブルース・リーやミスターブーが好きだった私には特別
な場所でもあった。

ゴミゴミとした街中で忙しく動き回る香港の人達。
活気がありそうだなぁ。

帰国後、もしまとまった休みが取れそうだったら行って
みようかな?
台湾に来てからほとんど休んでないし、有給も全然消化
出来てない。4~5日、週末も入れれば3日くらいなら
会社も休めるかも知れないな。。。勝手に想像を膨らま
していた。

昼前に工場へ到着。

到着と同時にサイ社長が「ご飯、食べよう」と笑顔で迎
えてくれた。

小野田社長との出会い。
興奮冷めやらない私は誰かに話したくて仕方がなかった。
でも、それをサイ社長に話すほど中国語が上達していな
かった。

美味しい水餃子をほおばりながら、香港を闊歩している
自分の姿を想像した。

小野田社長と出会ってから10日ほど経過したある日。

工場の電話が鳴った。

サイ社長が受話器を取り、「ホ~ホ~」と頷き、私に受
話器を渡す。

上司かな?と思い電話に出ると。

「お~、元気でやってるかい?俺や俺、小野田や。覚え
てる?」

なんと小野田社長からの電話だった!

「はい。もちろんですよ。忘れる訳ないじゃないですか!」

「ホンマかいな~」
と小野田社長。

「あの日はありがとうございました。とても刺激になりま
した。実は社長の話を聞いたら香港へ行ってみたくなり
まして。。。帰国したら会社に休みを申請してみようと
思ってるんですよ」

私は夢中で思いを告げた。

「ホンマか!嬉しいな。1度、見においでよ」
「いいんですか?はい!ありがとうございます!」

「で、いつにする?」
「えっ?とりあえず会社に休みの申請をして。。。」

「もし良かったら来週にでも香港に来ないか?2~3日後、
何だったら明日でもいいよ。俺がチケット買うからさ」

そ、そんなに早く???

行きたい。
今すぐにでも飛びたい!
でも、仕事がある。

そろそろ仕事も終盤。
出来上がった商品を陸送会社へ渡し、船会社へ運ばなければ
ならない。

「ちょっと仕事が。。。もうすぐシッピングなので現場を放
り出す訳には。。。」

「香港、見にこいや~。2人で中国国内の工場も見に行こう
や。君に見て欲しいねん。見て、判断して欲しいねん」

判断????

小野田社長の言う「判断」の意味が分からなかった。

どう返事をして良いのか分からず、しばらく無言でいると

「いやな、君と会ってから、君の事が気になって仕方がない
ねん。もし良かったら香港へ来て欲しい。そして俺の片腕と
として、この香港で一緒に働いて欲しいんや」

えっ??

「そ、そんなこと。。突然言われても。。」

「そやろな。でも、俺から君の上司には話をつけたる。心配
すんな。俺とあいつの仲や。あいつを納得させたる」

嬉しかった。
飛び上がりたいほど嬉しかった。

小野田社長の下、香港で仕事が出来る。
そのチャンスが舞い込んで来たのだから。

つづく

“台湾の思い出 香港社長 4 出張という名の一人旅 33話” への2件の返信

    1. 肥田木まり子さん
      こんにちは~

      香港社長
      とても魅力的な社長さんでした

      香港から電話をいただいた時は本当にびっくりしましたよ~

      続きをお楽しみに!

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