社会人1年目。
入社後40日目。
突然命じられた台湾出張。
出張先は台北ではなく、田舎町の竹南という小さな町。
当時はマクドナルドさえない小さな町だった。
言葉も通じないまま悪戦苦闘の連続だった現地工場での仕事。
その工場にバイトとして働きに来ていた当時高校生の女の子。
英語が堪能で、私の通訳を務めてくれ、勤務の後は私に中国
語を教えてくれた。
仲良くなったものの、ある日突然工場に来なくなり。
仕事が終わった私は日本へ帰国。
サヨナラも言えず再会も出来ないまま時は流れ、私の中で
彼女は思い出になっていた
時は流れ世界はネットで繋がった。
コンタクトを取ってみよう。
あるSNSで彼女らしき女性を見つけ、友達申請をしたものの、
申請が受理されることはなく、何の音沙汰もないまま月日は
流れていた。
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ある朝のことだ。
スマホに電源を入れる。
SNSを開く。
国内や海外の友人達がアップした記事を読んだり、届いて
いるメッセージを読み返信したりしながら朝食を摂ってい
た。。。その時だった。
『○○さんがあなたの友達申請を受理しました』との通知が入
ってきた。
申請を受理してくれた人の名前を確認する。
あっ!
思わず声が出てしまった。
あの子だ。
あの子が申請を受理してくれたのだ!
申請をしてから半年近くが経過していたので、私も申請を
したことを忘れていた。
そして彼女のアカウントへ行き、最近の記事を読んでみよ
うかなと思っていると、1通のメールが届いた。
送り主を確認すると彼女からのものだった。
ドキドキした。
嬉しかった。
早速メールを開く。
「お久しぶりです。
もう、びっくりしましたよ。
返事が遅れてごめんなさい。
私、知らない人からの申請は受けないし、DMも開かない
ことにしてたから。。。。
さっき溜まったDMを整理しようと思って確認していたら
日本人からのメールがあって。。。普通だったらその場
でゴミ箱に入れるんだけど、あれ?っと思ったの。この
DMは開いた方が良いって(笑)」
私の名前、覚えていてくれたのですね。
ありがとうございます。
本当に嬉しい。
あれから何年経ったのでしょうかね。
私はあのあと、台北の大学へ進学。
卒業後は台北にある会社に就職しました。
ほどなく今の旦那さんと知り合い、結婚。
もう知っていると思うけど、今では2児の母をしていま
す」
綺麗な英文だ。
工場にバイトに来ていたら頃から独学の割に綺麗な発音だ
った彼女。
語学が好きだと話していたっけな。
きっと多くの努力も重ねてきたのだろう。
当時の暑い暑い竹南での日々が蘇ってくる。。。。
続きを読む。
「今、私は日本語の勉強をしているんですよ。
まだ子供レベルの挨拶と平仮名の読み書きしか出来ない
から、日本語でメールを送ったりはしないでね(笑)」
当時、私に中国語を教えてくれていた子が日本語を学んで
いるのか~
「私たち家族は日本が大好きで、家族で大阪や九州へ行っ
たこともあるんですよ。みなさん、親切で食べ物も美味
しくて。。。とても好きな。。。大好きな国です」
「あなたはあれから何度か台湾へいらしているようですね。
竹南のサイ社長とも会われていたようですね。
懐かしい。」
「もし台北へ来る事があったら是非、連絡を下さい。
私たち家族でご馳走しますよ。」
台湾人の特有の人懐っこさだ。
「これからは時々、DMを送りますね。
お互いの近況報告をしましょう。
ありがとうございます。
また会う日まで。」
返事をしてくれた。
覚えていてくれていた。
そしてこれからも連絡を取り合う事が出来る。
飛び上がりそうな気持ちを抑え、仕事に向かった。
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ある日のこと。
彼女からメッセージが入ってきた。
「週末を利用して実家に帰っていました。
そう、竹南の実家です」
懐かしいなぁ~
台湾の暑い暑い夏を過ごした、あの小さな田舎町、竹南。
小さな路地や店、町外れにある廟が思い出された。
彼女と勉強したあの学校はまだ残っているのかな?
夏休みだったとは言え、勝手に校舎に侵入し、2人で勉強している
ところを見つかったりもしたなぁ。
続きを読む。
「それでね。
見せたいものがあるの」
1通目のメッセージはそれで終わっていた。
うん?
なんだろう???
画面をスクロールしてみる。
「あっ!」
思わず声を上げてしまった私。
彼女の文章が続く。
「これ。覚えてますか?
あの夏、あなたが私に送ってくれた手紙です。
確か、工場で妹たちに託してくれたんですよね?
もう忘れてしまったかしら?」
突然姿を現さなくなった彼女が忘れられず、彼女の妹たちに託したあ
の手紙と手紙を入れた封筒が写っている写真。
私の文字。。。雑だなぁ。
今と変わらない(笑)
「この手紙、確かに受け取っていました。
返事が出来なくてごめんなさい。
恥ずかしかったし、どうしたら良いのか分らなくて。。。」
初めて受け取った外国人からの手紙。
当時高校生だった彼女には荷が大き過ぎたかも知れない。
「でもね。こうやっていまでも大切に保管してあります。
嬉しかったの。
本当にありがとう」
当時の手紙を未だに大切に残しておいてくれていた。
彼女から届いたメッセージを読み、画像を見ながら、暖まってい
く心を感じた。
「ありがとう」から始まる感謝の返事を彼女に送った。
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今でも彼女との連絡は続いている。
昨夏は生まれて初めての海外ひとり旅を経験した彼女。
行き先は仙台だった。
2人の子供も大きくなり、旦那さんからも1人旅の許可が出たそう
だ。
「次ぎは東京へ。。。東京へ行きたいと思っているの」
届いたメールには、そんなことも書き添えてあった。
「こっちも台北へ行く機会があったら連絡するね」
「うん、必ず」
「うん、必ず」
未だにこの約束は果たされていないけど、いつか必ず再会の日は来る。
そう信じている。
現地の友人知人たちとの交流を通し、台湾との縁、絆は続いていく。
台湾。
私にとっての第2の故郷。