台湾へ  初めの1歩  出張という名の一人旅

「来週から台湾へ行ってもらいます」

会社入社後、約1ヶ月後に専務から伝えられた海外出張。

学生時代に海外旅行に目覚め、海外で働ける仕事を探していた。
そんな私にとって入社早々にして巡ってきたチャンス。

「ありがとうございます! 期間はどれくらいですか?」

「仕事が終わるまでです」と専務

仕事が終わるまで。。。ってどれくらいなんだろう?
まぁ、いいか。
海外で仕事が出来る。

「あなたは英語、大丈夫でしたよね?」と専務

「はい。専門的な会話は出来ませんけど」
英語、勉強しておいて良かった。
芸は身を助けるのだ。

台湾の事は地理的な位置や中国と独立問題で揉めている程度の知識しかなかったので、会社近くの本屋で関連本を買い込んだ。

「では桃園飛行場(台湾の国際空港)であなたの上司と待ち合わせて、台北市内のオフィスへ向かって下さい。翌日、上司が仕事場へ案内してくれますので」と専務から事務的に伝えられた。

海外旅行の経験がそこそこあったので、飛行場から台北のオフィスなんて住所さえ教えてくれれば自分で行けるのになぁ~と思ったけど、リムジンを手配してくれたと言うし、経験として乗っておくのも良いだろう。

人事部から渡されたチケットを手に、当時は羽田空港にある中華航空専門のターミナルへ。

新入社員なのに何故かビジネスクラスのチケットだった。
同族経営の会社で経費の使い方でめちゃめちゃだったのだ。

現地時間の昼過ぎに空港へ到着。
入国審査を済ませてゲートを抜けると私の名前が書いてあるボードを持ったおじいさんが立っていた。
おじいさんの元に駆け寄り、名前を告げると「私はテイです。よろしく」と優しい笑顔。

台北オフィスの社長さんだった。

後ろには当時の上司が立っていて、握手で迎えてくれた。
この上司か台湾、香港、タイ、フィリピンを常に飛び回っていたので、日本では会う機会がなく、飛行場で会うのが初対面だった。

大きな黒塗りのリムジンに乗り、台北のオフィスへ直行。

高速を降りて街中を走るとコンクリートむき出しの、やや古ぼけた建物。
漢字だらけの看板。
南国独特の日差し。

異国間満載。
もうそれだけでテンションが上がる。

オフィスに到着。
さて、打ち合わせでも、と思いペンやノートを取り出したその時、
「もう遅いので仕事は明日。さぁ、ご飯を食べに行きましょう」とテイさん。

拍子抜けしたけど、時刻は17時。

オフィス近くにある寿司屋で料理を楽しみ、酒を飲まされ、酔っ払ってタクシーに乗せられホテルへ。。。。

こんなんでいいのかな。。。?
と思いつつ、まぁ、アジアだしねと変に自分を納得させて眠りについた。

翌日、張り切ってオフィスへ。
8時に全員が揃い、台北から約1時間半ほど車で南下。
竹南という田舎町にある工場へ向かう。

そこにある工場で商品品質管理をするのが仕事だと伝えられた。
あれ、台北勤務じゃなかったのね。。まぁ、どこだろうが海外で働ければ良かったので、どこでも問題はなかった。

竹南に到着すると工場ではなくレストランへ。
そこで現地工場の社長さんと待ち合わせしているとのこと。

店に入ると大人しくて優しそうなおじさんがニコニコしながら近寄ってきた。
「○○○○○。。。」と早口で巻くし立て、私の手をギュッと握る。

初めて聞くリアルな中国語だった。
「この方は社長のサイさんです」
台北オフィス勤務のワンさん(女性)が英語で通訳してくれた。

丸くてクルクル回るテーブルに座り、台湾料理を楽しむ。
初めて見る台湾料理が次々と運ばれてくる。
美味しい!
どれも美味しい!

私の上司は中国語が話せたので、現地の方々と談笑。
理解出来ない私はひたすら台湾料理を食べていた。

台湾料理、美味い!
これがその後、私に遅い掛かる悲劇、いや喜劇の始まりでもあった。

美味しい食事が終わり、工場社長のサイさんがお会計を済ませた。

さて、いよいよ工場へ!
一体どんな場所で働くのだろうか?

ワクワクしながら店の外の駐車場へ向かった。

つづく